起源: 「作」は作る、「品」は物。作った物/作られた物のことで、主に芸術活動によってつくられた創作物を指す。文脈:いつのことだったか思い出せないが、「作品」は英語だと「work」である、と知った時に、なんといえばよいか、ほう、と息をつく感じがあった。主に「仕事」としてとらえていた単語が、芸術作品という意味を示すこともある、というのは、少し納得しづらかった。少なくとも若い頃の私にとっては、日本語の「仕事」からは、就職や給料といった賃労働の色が拭いがたかった。そして、演劇という言葉には、世間から夢とか趣味という色を塗られることがどうも多かった。つまり、演劇は仕事にならないものだった。一方で、作品を「仕事」ということの軽やかさが気に入ることもあった。作品という単語そのものは字面も音もサクッと軽いのだけれど意味や思い入れが重たくなりがちでもあった。ところで、演劇の演出家(つまり自分)にとっての作品とはなんなのか。作品は、「品」という字で物質であることをほのめかしている。絵画や彫刻であれば悩む必要はなかった。しかし、演出とは形のある物を(直接)つくることではない。演出とは物ではないし、書き留められた文字ではないことも多いから、指をさしてわかるような形をもっていない。そもそも自分の仕事がどこからどこまでなのか、判然としない。戯曲は劇作家の著作物で、俳優のパフォーマンスは俳優のもので、照明のシークエンスが照明プランナーに属するとして、演出家は舞台上に立つこともなく何をしているのか。ChatGPTをはじめ、AIにどうやって肩代わりしてもらったらいいかもわからない(だからこそ、もしかしたらAIに奪われにくい仕事なのかもしれない、といういじましい思いもある)。そもそも上演も物ではない。上演とは特定の時間と場所で起こった出来事であり、写真や映像といった副産物を残すことはできても、上演そのものは発生すると同時に失われていく。